大判例

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横浜地方裁判所 昭和38年(ワ)1158号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔争点〕原告所有の福重丸が昭和三七年二月一〇日午前四時一五分東京湾海獺島燈標付近において竹丸と衝突し、沈没した。そこで、原告は、(船舶登記簿の記載に従い)被告に対し竹丸の所有者としての責任を問い、損害賠償を請求したが、被告は、既に竹丸を訴外上原照雄に売り渡していたから、(しかし、対抗要件を具備していない)右衝突事故当時は竹丸の所有者ではなく、したがつて事故による責任を負ういわれがないと抗争した。判決は、次のように説いて被告の責任を否定した。

〔判決理由〕二、まず右衝突当時竹丸が被告の所有であるかどうかにつき判断する。

<証拠―省略>を綜合すると「被告は昭和三四年一〇月訴外日正汽船株式会社から、同会社所有の竹丸他四隻の船舶を買い入れ、竹丸については昭和三五年一〇月一三日受付、同月一〇日の売買を原因にして被告のため所有権移転登記を経由した。被告は竹丸を買い入れた後、すなわち昭和三四年一〇月三一日竹丸を訴外上原照雄に対し代金一、五〇〇、〇〇〇円を以て、その代金は昭和三五年一月から向う一五ケ月の各月末に一〇〇、〇〇〇円宛分割して支払うことにし、所有権は右代金が完済されたとき移転する旨を約して売渡した。買主訴外上原は昭和三六年三月末日を以て、右割賦金を全部支払つた。」以上の各事実が認められる。

右事実によれば、被告は昭和三四年一〇月頃売買によつて竹丸の所有権を取得し、昭和三五年一〇月一三日所有権移転登記をうけたが、その前にこれを訴外上原に買却し、同人が昭和三六年三月末日竹丸の所有権を取得したものと解される。しかしながら、被告と訴外上原間の右売買につき、商法第六八七条に定める船舶所有権移転の対抗要件が具備された事実を認めることのできる証拠がないから、被告は訴外上原との間に成立した右売買の効果を利害関係を有する第三者である原告に対して法律上当然に対抗することができず、したがつて原告との関係においては、被告が竹丸の所有者とみなすべきである。されば本件衝突時において竹丸の所有者は被告であると解するのが相当である。

三、次に、商法第六九〇条にいう船舶所有者とは、自ら自己所有の船舶を航海の用に供する者と解するから、本件衝突時における竹丸の航海が、被告のためであるかについて判断する。

<証拠―省略>によれば「肩書地において海上運送業(専ら砂利運送)を目的とする被告会社は、船腹の保有量をふやす必要から竹丸外四隻を買い入れたが、しかしこれを全部保有することは資金の関係から好ましくなく、扱船とした方が有利と考え、かたがた、かねて訴外上原より船舶買入れの斡旋を頼まれていたので、竹丸を同人に売渡し、昭和三五年一一月これを引渡した。そして被告は自己の得意先である訴外日本ライトクラベルの運送については、以後訴外上原をして運送人とすべく訴外上原との合意で、被告が訴外上原にかわつて、両者間の運送契約締結、あるいは竹丸の修理代、燃料代等を支払うこととし、右立替金及び訴外上原が被告に支払うべき竹丸の売買代金の割賦金、運送契約締結の手数料等を、被告が訴外上原に代つて訴外日本ライトクラベルから受領する運送賃から控除して、残額を訴外上原に支払うこととした。かくして訴外上原と訴外日本ライトクラベル間の運送契約の履行のため、訴外上原が浦賀港から伊豆大島波浮港に向け、竹丸で航海中、本件衝突を惹起したものである。」以上の事実が認められる。<証拠―省略>中に、本件衝突当時訴外上原照雄が被告会社に勤務していた趣旨の記載があるが、それは前記認定の資料に供した証拠にてらしてみると直ちに採用できない。

右事実によれば、本件衝突時における航海が被告のためとは認めがたく、他にその事実を認めるに足る証拠がない。

(石橋三二 深田源次 千葉庸子)

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